良い一言は連鎖する

お気に入りスポットで真っすぐに伸びる竹を見上げて。
見上げているこちらまで、思わず背筋を伸ばしてしまいます。
風が吹くと、竹の葉のさざめきが心地よく。
一時の清涼感を感じます。

たまに訪れるクリニックの待合室での出来事が心に残っているので、ご紹介させて下さい。
限られた空間に、それなりの患者さんがひしめいていて。
最近はネットからの予約もできますが、予約通りにならないもの。
様々な患者さんがいらして、症状によっては診療時間も長くなりますし。
お互い様ですが「早く順番が来て欲しい」と少し苛立ちと緊張感が漂っていました。

そのような中で、あるご年配の上品なおばあさまが呼ばれました。
「お先に失礼しますね。」
小声ながらも優し気な声の一言と共に、軽く会釈をしながら診察室へ向かわれました。
ピーンと張りつめていた待合室の空気がフワッと緩み、和らぐ。
同じ空間？と思えるほどの変化を感じました。

そのおばあさまが診療を終えて、待合室にお戻りになると
「どうぞ、こちら空いてますよ。」
と、ずっと待っていた男性が、お席を詰めて譲っていました。
この後、次に呼ばれた方も「お先に」と声かけをしていらっしゃる。
あの張りつめた雰囲気が嘘のよう。

たった一言が、その場の雰囲気をガラリと変えてくれたのです。
おばあさまの心からの優しい一言力。
その一言が周りの方にも伝染して、自然と出てくる「お先に」「ありがとう」の言葉たち。
その場の私を含む皆様も「そうよね！そうでありたい。」
と心洗われ気づかされ、人生の先輩に倣った訳です。
思い返してみれば、お茶の席でもお点前をいただく際、次の方に「お先に」の心で会釈します。
焼香をする際なども同じです。
「あなた様よりお先に失礼いたします」という謙虚な心を表現しています。
日常でもその心を大切に表現できれば、トラブルが起こり辛くなるのでは？

何より、心が「嬉しい」と思うと、私も！と連鎖するものです。
ウイルスの伝染は困りますけれど、良い一言が伝染るのは大歓迎です。